ドームチルドレン

月刊少年ガンガンといえば、何の作品を思い浮かべる?
こう聞かれたら、年の若い人なら『ソウルイーター』もしくは『鋼の錬金術師』と答える人がほとんどだろう。
俺がガンガンを買わなくなる寸前に連載が始まったハガレンが、
今やガンガン史上屈指の知名度と人気を獲得しているのは時代の流れを感じる。

さて、冒頭の問いへの俺の答えは、記事の題名にもなっている『ドームチルドレン』。
地球が核に汚染されてから50年が経過した世界、放射能が広まる前にかろうじて
生活補助機能を内包した核シェルター「ドーム」に逃げ込んだ人類の末裔の
日常と苦悩、葛藤を描いた作品。
言ってみれば、暴徒のいない北斗の拳みたいな世界設定。
元々はガンガン主催の漫画大賞コンテストに応募され、栄えある大賞に選ばれた
一話限りの読み切り作品で、それを連載した形になる本作。

ストーリーを大雑把にまとめると、以下の通り。
1.外界の汚染度が下がったため外に出るも、世界は荒廃したままだった
2.少しずつ外の世界を調査していこう
3.自分たち以外に生き残った人類を見つける
4.通信機が偶然繋がって、遠い場所の生き残りと交信
5.ドームの電池切れそう、ヤバい俺らマジやばい
6.交信していた生き残りのいる場所は土壌が豊からしい、皆で行こう
7.年寄り(年長組)はドームに残る。あとは若い世代の仕事
8.エピローグ


俺が一番好きなのが最終話。
リンク先の画像の、一番下側のおばさんと少年の会話シーン。
最終話のほとんどは、主人公の母であるジェシカが、ドームを旅立っていった息子のしんたと
通信機を使って交信し、お互いの近況をやりとりするという場面で占められている。
画像は途中で終わっているが、リンク先のサイトの人が書いてるように、ここからの涙腺攻撃が本番だ。
この先も書いちゃうけど、一応ネタバレだから隠すわ。



実はこの会話リアルタイムのものじゃなく、
通信機に録音されている、数年前(多分)に通信した際の息子の声を再生しているだけ。
カセットテープとかCDと会話してるようなもんなのね。
「"父親って楽しいね"って、父さんに伝えておいてよ」
と(録音時の)息子が言う辺りを皮切りに、会話がちぐはぐになっていく。
ドームに残ったのは、ノゾム・ジェシカ夫妻と、科学者である博士の三人+働きロボット。
博士は通信機に録音機能を付けた後に亡くなり、夫であるノゾムは
この会話の録音時にはまだ存命だったようだけど、"今"はもう亡くなっている。
もう人間はジェシカしか生きておらず、伝える相手はいないわけだよ。

お互いのやり取りを全部覚えてしまうぐらいに、この会話を繰り返したんだろうね。
たとえ途中から会話の辻褄が会わなくなって、現実を突きつけられることがわかっていても。

で、だ。
俺がこのシーンが好きなのには一応ちゃんとした理由があってな。
このドームチルドレンって作品、母親っていう立場がらみの話では一貫して
「母親の強さ」を描き続けていたんだよね。
でもこの最終話だけ、「母親の弱さ」を描いてる。
息子との最後の思い出を心の拠り所にして生きている、たった一度きりの弱い母親の姿。
それを見てるのは読者だけっていう構図がたまらなく切ないのよ。
画像には出てないけど、
「母さんを迎えにいきたい。今俺がいるのは豊かな場所だ、一緒に暮らそう」
っていう素直な心情を吐露したしんたに、
「戻ってきちゃいけない」
って諭す場面があるんだ。
そうだねって言いたいじゃん。一緒に暮らそうかって言っちゃいたいじゃない。
でも言わないんだよ。この会話を最後に通信衛星が壊れちゃって、この録音が息子との最後の通信。
息子に対しては最後まで「強い母親」でい続けた。この辺読んでると毎回泣きそうになるの。
血も涙もない冷血人間だと思われてるかもしれないけど、すごい涙腺ゆるいんだぞ。

気になった人はぜひ読んでみてくれ。絵柄がちょっと受け付けなくても気にせずに。
全3巻だから、お財布には優しいはずだ。
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by henga | 2012-01-20 21:44 | レビュー | Comments(2)
Commented by ykr at 2012-01-21 01:27 x
読んでたはずだけど全然覚えてなかった。全9話ってそんなに短かったけか。
ハガレン以前のガンガン作家なら浅野りんとか好き。
Commented by henga at 2012-01-21 12:22
>>ykr
3ヶ月おきの連載とかそんな形式だったらしく、1話のページ数がなんとも贅沢な50ページ超。
このおかげもあってか、作者の書きたいことが1話でキッチリと消化できてる印象がありますねー。
ハガレン寸前ぐらいからちょっと毛色の違う漫画が多くなってきましたね。
浅野りんならPONとキマイラとか、真面目路線のパンゲアとか好きです。


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